地元泉州で幼い頃から始めた野球、その情熱は中学になるとさらに高まり、泉州ボーイズではチームの中心選手として優勝を何度も経験しました。
卒部する頃には強豪高校などを含め10校以上から声をかけてもらい、強い高校で「寮」に入り野球をしたいという思いから、高校は大阪の強豪校、大阪桐蔭高校に決めました。
高校での寮生活は、毎日厳しい練習を終えると掃除、洗濯をはじめ身の回りのことは全て自分でやらなければなりませんでした。家で毎日あたりまえのように見ていたテレビも、携帯電話も持つことができず外部との連絡は完全にできない辛さはありましたが、好きな野球に没頭できる環境になりました。
しかし入学早々に肩を痛めてしまい、1年間のリハビリを余儀なくされ、大阪桐蔭で1年間を棒に振ったことによる力の差は想像以上のものとなりました。
なんとか持ち前の負けん気と諦めない気持ちで3年生になると左打者の代打の切り札としてベンチ入りを果たすことができました。
甲子園の土を踏むことはできませんでしたが、最高のチームメイトと共に精一杯野球に取り組み、仲間の大切さや苦境に追い込まれたときの心の在り方を学ぶことができました。
大阪桐蔭高校での3年間の寮生活を終え、再び実家での生活が始まりました。
その時に初めて家の事情をはっきりと理解することができました。
水なすの収穫時期になると、毎朝4時に目覚ましが鳴ります。
毎朝、家族で一番早く目を覚まし、家族全員分の朝食を作るのが母でした。
それから畑に向かう母。家族全員分の朝食を作ってから畑仕事をすることは決して楽なことではないはずです。
母親が頑張っている姿を見ていると自分が助けてあげたい、そういう気持が自然と湧いてくるようになりました。
今まで気付かなかった、というより気付けなかった・・・。
一般的には農家は長男が継ぐものだと言われています。
しかし中出家は母親がそれをさせたくなかったんだと思います。
僕の可能性を閉ざすことはしたくなかったんだな、と。
中学生の頃までには友達と遊んで家に帰るのが遅くなっても怒られたことが一度もなければ、自由にやりたいことをやってダメと言われたことも一度もありませんでした。
本当に自由にさせてもらいました。野球も遊びも夢中にできたのは、父、母の思いやりがそこにあったからでした。
家族が僕を暖かく見守りながら育ててくれたように中出農園の野菜たちも優しく育てていきたいと思います。
中出庸介 1983年12月30日生まれ
家業である農業を始めた翌年、2008年に農園内で新規事業を立ち上げました。 きっかけは母の言葉でした。「水なすの漬物したら?」と言われた時、二つ返事で「よっしゃやるわ」。それからすぐ農業をしながら自家農園の水なすを使ったぬか漬けの研究をはじめ、1年ほどかかり、なんとか水なすシーズンまでに商品化することができました。 当時は農園ビニールハウス前にテントを張り、マジックで中出農園と書いて販売を始めました。祖父の代から水なす農家としては地元でも名が知れていたため思っていたより売れた事を覚えています。ですがやはりものづくりはもちろんの事、商売は感覚やセンスだけではうまくいきません。当時の僕は知らない事が多すぎました。
そこで取り組んだのはさらなる漬物技術向上のための研究。それと平行してビジネス書を読み漁り、ひたすらトライ&エラーをくり返しました。どうしたらもっとおいしくなるか?どうしたらお客さんは購入してくれるか?僕の頭の中は常に水なすと商売の事で頭がいっぱいでしたが、めちゃめちゃ楽しかったです。当時19、20歳。漠然とした不安と恐怖はありましたがそれ以上に楽しくてしかたなかった。がむしゃらに取り組んで作った水なす漬けを「おいしかった」そういってくれるお客さんがいたからです。そしてあるお客さんから「にいちゃん商売人に向いてるわ」そういってもらえた事も自信になりました。
そういったお客様の声が自身の方向性を決めるポイントになり、農家としてこれまで未開拓の直販に全力を注ぎ、主に直売所とネット通販をメインに販路を大幅に拡大することに成功しました。直販にこだわる理由は、「楽しいから」。お客様との信頼関係を築いていける直販は僕にとって魅力的で充実しています。
正直直販を始めた当初、周りから反対され「失敗したら笑われるだけ」とまでいわれてました。僕は「悔しい見返したい」そんな気持ちが強くありました。でも本気で取り組めば取り組むほどいつしかそんな気持ちは微塵も感じなくなっていたんです。
いまこうして商売ができているのは多くのお客様をはじめ、関係者・お取引様各社、仲間や家族の協力があってこそのものだと思います。
祖父母、父母が向き合い、大事に育ててきた水なす。幼い頃からその姿を見てきました。
責任と誇りをもって自慢の泉州水なすをぬか漬けにして全国のみなさんに美味しいと言っていただけるよう、日々ものづくりに励んでいくことを約束します。
素材本来の味を大切にし、食べて頂いたお客様にとって美味しさと健康、味覚を守り、安心安全なものづくりに取り組みます。
中出 達也(Nakade Tatsuya)1988 年5 月10 日生れ
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